仙台高等裁判所 昭和59年(う)39号 判決
職権で原判決の法令の適用の適否を調べてみると,原判決は,被告人の未車検車両を運行の用に供した事実につき道路運送車両法108条1号,58条1項を,また未保険車両を運行の用に供した事実につき自動車損害賠償保障法87条1号,5条を適用したうえ,以上を刑法45条前段の併合罪として処断していることが明らかであるが,被告人の本件行為は自然的観察のもとにおける社会的見解上一個の車両運転行為があるにすぎず,これが二個の罪名に触れるばあいであるから,両者は併合罪ではなく観念的競合の関係にあると解すべきである。したがって原判決はこの点において法令の適用に誤りがあるところ,原判決のように罰金刑を選択するとして,両者を併合罪とすればその処断刑は15万円以下の罰金となり,観念的競合とすれば10万円以下の罰金となってその法定刑に比較すると処断刑の範囲に大きな差があるうえ,原判決の宣告した罰金5万円は処断刑の範囲の低い方にあるともいえないから,右の法令適用の誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかというべきであって,原判決は破棄を免れない。